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第2話 結構です!!

작가: 天咲琴乃
last update 게시일: 2026-06-01 20:54:36

部屋の空気が凍り付いた。

ローゼン王子が固まっている。

私も固まっている。

いや、違う。

私は冷静だ。

とても冷静だ。

なぜなら一度死んだから。

「え?」

ローゼンが間抜けな声を出した。

「今、なんと……?」

「結構です」

私はもう一度言った。

「付き合っていただかなくて結構です」

沈黙。

メイド達も固まっていた。

一人のメイドが口元を押さえている。

笑いを堪えているのかもしれない。

気持ちは分かる。

王子が振られるなど前代未聞だ。

「ルピナス」

ローゼンは困惑した顔で言った。

「君は熱があるんだろう?」

「ありません」

「風邪で頭が混乱しているんじゃないか?」

「しておりません」

「いや、でも」

「しておりません」

私は真顔で答えた。

前世の私なら頬を赤らめていただろう。

だが今の私は違う。

目の前にいるのは未来の元婚約者である。

しかも私を処刑台送りにした男だ。

「殿下」

私はにっこり微笑んだ。

「私は今、人生で一番正気です」

ローゼンはますます混乱した。

「ではなぜ断るんだ?」

その質問を聞いた瞬間、私は思った。

逆に聞きたい。

なぜ受けると思ったのだ。

しかし未来の話はできない。

私は適当に理由を探した。

「殿下は素敵な方です」

「だろう?」

「でも私には勿体ないです」

「そうか?」

「はい」

「そうか」

ローゼンが少し機嫌を直す。

ちょろい。

前世の私よ。

なぜこの男に十年も振り回されたのだ。

「なのでお断りします」

「待て」

「結構です」

「待て」

「結構です」

「話を聞け!」

「結構です!」

私は勢いよく布団をかぶった。

見たくない。

顔が良いのは認める。

声も良い。

だが騙されない。

私は知っている。

イケメンでも駄目な男は駄目なのだ。

布団の中から叫ぶ。

「メイド隊!」

「は、はい!」

「殿下を玄関までお送りして!」

「ルピナス!?」

ローゼンが悲鳴を上げた。

「風邪がうつるといけませんので!」

「いや私は構わないが」

「私は構います!」

「なぜだ!」

「色々です!」

ローゼンは納得していなかった。

当然である。

だが私はもっと納得していない。

処刑されたのは私なのだ。

しばらく押し問答が続いたあと。

メイド達が恐る恐る言った。

「殿下……」

「帰れと?」

「はい……」

「本当に?」

「はい……」

ローゼンは呆然としていた。

人生で初めて女性に振られた男の顔だった。

私は布団の隙間からそっと覗く。

そして心の中でガッツポーズした。

よし。

帰れ。

帰ってくれ。

私の平和のために。

ローゼンは最後に一度だけ振り返った。

「ルピナス」

「なんでしょう」

「本当に?」

「本当にです」

「……そうか」

その背中が部屋から消える。

扉が閉まった。

カチャン。

静寂。

そして。

私はベッドの上で飛び起きた。

「やったああああああ!!」

メイド達がびくっと震える。

私は拳を突き上げた。

未来回避だ。

第一段階成功。

婚約者候補。

排除完了。

「勝ったわ!!」

「何にですか?」

「運命によ!」

メイド達は顔を見合わせた。

意味が分からないという顔だ。

だが構わない。

私はまだ知らなかった。

王宮へ帰る馬車の中で。

ローゼン王子が人生最大の悩みに直面していることを。

『なぜ僕は振られたんだ?』

という、とても重要な問題に。

(第3話 王子、眠れない)

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